御山義明法律事務所 MIYAMA YOSHIAKI LAW OFFICE

事例紹介

親族相続相続案件の処理に絡み戸籍にない親子関係の立証に成功した案件

子息と親族の想いが実を結び
戸籍の記載を覆した事例

概要

ご依頼者は地方諸島のご出身。実母は今でいうシングルマザー。ただ世間体を気にしたのか、ご依頼者は彼女の叔父叔母の実子として戸籍が届けられました。その後種々の事情で養子縁組・離縁等が繰り返され、最終的に、ご依頼者は戸籍上、実の母と兄弟関係にある記載となっておりました。実母は再婚しており、その夫(既に死亡、Aさん)との間に1人子どもがおりました。そのようななかご依頼者の実母(被相続人)が亡くなり、更に間を置かずしてその子どもも亡くなりました。Aさんには商才があり、数億円を下らない不動産と預貯金が遺産として残されておりました。その段階で当職にご相談に。本来はご依頼者が唯一の相続人(実子)のはずですが、上記のとおり戸籍上は実態とは異なる記載となっておりました。加えて、戸籍をさかのぼって調べると、本家分家あわせて20名近い(戸籍上の)法定相続人が登場することが判明しました。ご依頼者と協議したところ、全く欲のない誠実な方で「もともと母の遺産をあてに生活してきたわけではないので、戸籍上の法定相続分だけいただければ結構です。私が母の唯一の子であることは親戚皆よく知っていますし。」とのこと。その方向で処理を進めようとしたところ、被相続人にとって遠い親戚にあたる(戸籍上の)法定相続人の一部の方より、ご依頼者が唯一の実子であることを否定する発言がなされ、更には自らには寄与分があるとして法定相続分を大きく上回る持分の取得の要求がなされました。これを受けてご依頼者は、「お金が欲しいわけではない。自分のルーツ、自分が母の子どもであるという事実を裁判を通じて公的に認めてもらいたい。」ということとなり、「親子関係存在確認訴訟」を含め戸籍の変更を求める複数の訴訟を提起しました。

解決へのアプローチ

本件においては、ご依頼者が被相続人の実子であることを示す直接的な証拠はありませんでした。お寺と相談し、ご遺骨を使ってDNA鑑定もしましたが、状態が悪く結果を出すことはできませんでした。しかしながら、本件において大きな力となったのは、ご依頼者が被相続人の実子であることをよく知るご親族の存在でした。彼らは無償で戸籍上の法定相続分をご依頼者に譲渡(相続分の包括譲渡)し、さらには裁判で証人となってくれ、ご依頼者が実子であることを示す幼い頃の多数のエピソードを証言してくださったのです。裁判当初は、戸籍をひっくり返すには直接証拠がなさ過ぎ、判決の先行きは厳しいことが想定されましたが、わざわざ自分の法定相続分を投げうってまでご依頼者が被相続人の実子であることを切々と訴えるご親族の迫真迫る証言に心を動かされた裁判所は、その判決において明快にご依頼者が「遺された唯一の実子である」との判断を下しました。戸籍という公的な書類を、直接証拠なく、間接事実・間接証拠だけでひっくり返した希有な事例でした。